生成AI活用で"新しい価値を創造する力"を育む「AI活用アカデミア」

1分でわかる要約
LINEヤフーでは、日本のIT人材不足という社会課題を解決するため、受講実績3万人を超えるプログラミングスクール「テックアカデミー」を運営するキラメックスと協業し、オンラインスクール「LINEヤフーテックアカデミー」を提供しています。
その中でも軸となる「AI活用アカデミア」はおもに非エンジニア職種の方を対象とする学習プログラムです。AIの基礎を理解した上で、生成AIの実務的なスキルを身につけられるカリキュラムとなっています。
本講座は、目まぐるしく変化するAIの時流に合わせ、コンテンツをアップデートしていくことはもちろんですが、クライアント企業ごとに1ヵ月から4カ月の間で受講スケジュールをカスタマイズすることも可能です。
3カ月以上のスケジュールでお申し込みいただく場合には、LINEヤフーやその他のクライアント企業の社員の方も一緒に受講し、多業種、他職種の方々と毎回グループワークを行うことで、普段自社の仕事の中では得られない、新たな気づきがあります。

今回は、本講座を3カ月半のスケジュールで受講いただいた東急不動産ホールディングス様、LINEヤフーの社員のお二人にAI活用アカデミアについてお話を伺うとともに、東急不動産ホールディングスのDX推進人材育成のご担当者に講座の導入を決めた背景などについて話を伺いました。

福岡 拓也 東急不動産株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報室 兼    ブランドマネジメントグループ 係長

2015年度に新卒入社。現在は東急不動産株式会社のコーポレートコミュニケーション部にて、メディア対応や経営方針の社内外発信・浸透などを担当。

木下 優貴 東急不動産ホールディングス株式会社 グループCX・イノベーション推進部 デジタル戦略グループ

2018年度に新卒入社。現在は東急不動産ホールディングスのグループCX・イノベーション推進部にて、中期DX戦略の策定、DX推進人財育成などを担当。

山岡 滉治 LINEヤフー株式会社 コミュニケーションカンパニー LY会員サービス統括本部 PIM本部 事業推進部 データAI推進チーム

メール・カレンダーサービスのデータAI推進チームにて、開発を推進する役割として従事。社内⽣成AI活⽤コミュニティの運営や、社内外開発者向けイベントの企画も⾏う。

AIを活用し、業務効率化と顧客体験価値の向上を推進できる人材を育成したい

ーーーまず、皆さんのお仕事について教えていただけますか。

私は担当の仕事が主務と兼務で二つあり、主務ではYahoo!カレンダー、Yahoo!トラベルの開発をしています。所属としては、コミュニケーションカンパニーのデータ推進チームです。兼務のDeveloper Relationsでは社内外向けのエンジニア向けに開催する勉強会、およびAI関連の勉強会の企画・運営しています。
今回の講座では、福岡さんと同じグループのメンバーとして、一緒にグループワークを行いました。

AI活用アカデミア受講時には東急不動産のコーポレートコミュニケーション部にあるブランドマネジメントグループに所属していました。現在は広報室が主務となり、ブランドマネジメントグループにも兼務しています。
ブランドマネジメントグループは名前の通り、会社のブランディングを担う部署で、テレビCMを使った社外向けのブランディングを企画したり、インナーコミュニケーションでは社内報の制作など、社内外に向けたブランディング施策を幅広く担っていました。

私は東急動産ホールディングス株式会社 グループCX・イノベーション推進部のデジタル戦略グループで、東急不動産ホールディングス全体のDX推進人材の育成を担当しており、今回のAI活用アカデミアのような社員向けの研修の企画や社外の方との会議資料の作成と公開なども担当しています。

ーー東急不動産ホールディングスの人材育成担当である木下さんに伺いたいのですが、グループとしてAI活用アカデミアを受講するに至った背景について教えてください。

まず東急不動産ホールディングス全体として、ブリッジパーソンという、ビジネスにデジタルを落とし込んで業務を主体的に推進する人材の育成を図っています。
その中で、AI活用という軸を昨年度に取り上げたいテーマの一つとして考えていました。業務効率化と顧客体験価値向上という2面において、何か今後AIを活用した業務を主体的に推進できる人材を育成したいというタイミングでした。
そこで今回、AI活用アカデミアを知り、グループとして参加を募ることになりました。

ーーまさにAI活用とデータ分析のところで、AI活用アカデミアのテーマにマッチしたのですね。受講前のAI活用アカデミアに期待していたポイントを教えてください。

グループ全体ですと、デジタルもそうですし、AIというのも昨今よく聞くけれども、具体的には何ができるのかあまり分からないという状態で、理解も浅かったと思っています。
AIと聞くと、「なんでもやってくれるんでしょう」みたいな認識が多くの人にあると思っていて、そもそもAIに対する理解も甘いという状態でした。
そこでわれわれが解決したかったのは、AIは魔法の杖的なものではないことと、自分で活用して、業務や事業に存在する課題に対してAIを武器として使えるようになれば、状況が良くなるんだよということをわかってもらいたい。「グループ社員一人ひとりが自らの力でAIを業務に落とし込んで使いこなせるようになってもらう」というところに持っていければという期待がありました。

他社の方とグループディスカッションをしながら一緒に学べるワークショップが良かった

ーー今回、実際に講座を受講された福岡さんと山岡さんにお伺いしていきたいのですが、AI活用アカデミアに参加しようと思った理由と、当時のAI活用の頻度や理解度について教えてください。

上司から「参加してみたら?」と声をかけてもらったのが応募のきっかけでした。
担当業務の中ではリアルの現場に行って動く業務が多いのですが、ブランドマネジメントという仕事の性質上、たとえば社内報を書いたり、企画書やさまざまな資料の作成業務もそこそこありまして。生成AIを使った業務効率化にはもともと興味がありました。
ただ具体的にどのように使えば良いのかはあまりわかっていなかったので、この機会に理解を深めて、チームや部門の皆さんにも知見を共有できたらと思い、参加しました。

もともと私は2年前ぐらいまでエンジニアとして開発の仕事をしていたのですが、兼務で企画寄りの業務やエンジニア向け勉強会の運営なども担当しており、その先のキャリアとしてもそういった企画寄りの仕事をしていきたいと考えていました。
そんな中、データを使ったAIの利活用を会社全体として推進していくことがミッションのチームが立ち上がり、希望して異動しました。
そして、ちょうどその頃に社内向けの研修講座として、このAI活用アカデミアの前身となる「Z文系AI塾」が開講しており、受講していたチームの上長やメンバーからとても好評だったんです。
そんな背景があり、今後AIを使い、データをどう利活用するかといった企画の仕事を進めていくにあたって、AI活用アカデミアで学ぶことが業務に生かせると考え、応募しました。

ーーこれまで異業界、しかもグループ外企業の社員の方と交流しながら学ぶ機会はありましたか。

ありませんでした。AI活用アカデミアは他社の方とグループディスカッションをしながら一緒に学べる点が、私の中で一番良かったと感じています。いろんな業種・職種の方とグループワークで対話することで、自社の仕事をしているだけでは得られなかった知見や発見がたくさんありました。

「もし不動産事業でAIを活用するとしたらどんな方法があるのだろう」とグループワーク内で話すことがあったのですが、ウェブサービスを提供するLINEヤフーで働いていると、不動産事業などのウェブサービス以外の事業におけるAI活用について考える機会がなく、視野が閉じてしまっているなと気づきました。
このように、AI活用アカデミアでのグループワークは、自身の業務や自社の事業領域から視野を広げてAIの活用方法を考える良いきっかけになりました。
ワークショップで集まってアイデアを考えたり、ディスカッションしながら学ぶのは楽しいですし、自分だけで考えていると煮詰まってしまうこともあるので、講座ではそれが解消されました。

ーーAI活用アカデミアを受講した率直な感想を教えてください。

グループワークで実際に生成AIを使ってみて、「グループでアイデアを考えてみよう」といったフェーズに入った時には、自分の業務に落とし込むイメージをつかむことができました。普段業務をしながら、生成AIをどう業務に活用するかというのは考えづらいですが、グループワークや個人ワークで課題を与えられることによって立ち止まって頭を働かせて考えられたのも、良い機会だったと思います。
また、画像生成AIでプロンプトを作り、自分が表現したい方向にコントロールしながら画像を作るということが、実際の広報・ブランドマネジメント業務の「人に伝える」という部分に近しい印象を感じ、業務でも活用できそうだと感じました。
AIに関連するツールが少しでも使えるようになったことで、さらに深く学びたいという気持ちになりました。

もともと私は業務がエンジニア寄りなので、知っている既知の内容が部分的にはあったのですが、「この観点では考えたことなかったな」といった発見がいくつもありました。
例えば、AIの活用タイプは識別系・予測系・会話系・実行系などの複数のパターンがあり、それぞれの使い方や用途を整理できたり、プロンプトを作る時に、何度も生成AIに問いかけをして会話しながら進めていくという、アシスタントのような形で扱うべきだという点にも気づけました。
私のように、普段から生成AIを使っている方や、ある程度AIの知識がある方でも、振り返って学んだり、アウトプットする機会があったりすることで、発見もたくさんあるのではないでしょうか。

グループワークでは多様な企業の参加者から、様々なコラボレーションアイディアが生まれた

ーー毎回のセッションでグループワークの機会がありましたが、福岡さんと山岡さんのグループの雰囲気はいかがでしたか。

山岡さんが積極的に話してくださって、メンバーとのコミュニケーションはとても取りやすかったです。とても良い雰囲気でした。

グループワークになるとつい仕切りたくなってしまいますね(笑)。後半にアイデアを実際に事業として提案するタイミングでも、自分のアイデアを忘れるくらい他の方のアイデアを引き出して、最終提案のアイデアまでまとめました。

LINEヤフーさんの事業背景や普段何をしているのかも知ることができ、そのような副次的な部分も非常に良かったです。

私も数十年後の不動産のビルやマンションがどうあるべきか、AIを活用して何をするかという事業アイデアや視点が、新鮮でした。一般消費者として利用する側の観点から、不動産関連でこういうものがあったらいいよねというアイデアを出したりもしました。部外者だから自由に言えるというのもあったかもしれません。

ーーたくさんのアイデアから最終発表の災害時のAI活用のアイデアに絞ったのは何故ですか?

改めて防災が大事だという話になりました。実装できそうなアイデアをその場で出し、具体的に掘り下げていく過程を生成AIを活用しながら進めることができたのは非常に良かったです。

生成AIと聞くと、0から生み出すような新しい事業だと思っていましたが、既存のものをさらに良くするという話も多く出てきました。それは普段の業務にも活用できると思います。

ーー最終発表で提案された『LINE ResQNet』は元々あったサービスをベースにしているのですか、それとも新規に作ったものですか?

ベースはLINEのアプリケーションです。近くの拠点や避難情報などを一元管理するものになります。LINEに聞けば全て教えてくれるというサービスです。
一部の機能はすでに広まっており、その先も安否確認の要請ができるようにはなっています。こうしたサービスをベースに、1つに情報がまとまった社会インフラとしての役割を果たすサービスが必要だと考えました。

日常的に使っているLINEで、「●●さんは大丈夫かな?」とか「避難所ってどこだっけ?」といった普段の会話のやり取りで必要な情報が手に入るようにしました。
LINEの企業公式アカウントに自由に質問ができて自動で返答が来るイメージですね。 災害時に普通のこともできない状態でも、LINEで災害情報や必要な手配が完結できると良いという提案でした。

ーー確かにこんなサービスがあったら便利ですね。その他にどんな案が上がっていましたか。

私はかなり具体的なものを提案しました。20代の独身男性向け賃貸マンションのクローゼットにAIのカメラセンサーを付け、クローゼットの中身を把握して服装を提案するというサービスです。「この服は着てないので売りませんか?」とYahoo!フリマに売る提案もします。
LINEヤフーと東急不動産のコラボレーションという観点でも考えました。

不動産の観点がないと、ビルや部屋単位でのAI活用はなかなか出てこないですね。0から1を生み出すだけでなく、既存のものを活用し探索しながらどうAIを使って提案するかを続けるべきだと感じました。
AIの活用は150人いれば150通りのアウトプットが出てくるので、他の人のアウトプットが学びになる

ーーグループでのやり取りの中で、印象に残っていることや具体的なエピソードがあれば教えてください。

生成AIを活用してマスコットキャラクターを考える課題がありました。
自分の地元にゆかりのあるガチキャラを考える課題で、ChatGPTに自分の地元について聞いて、歴史やバックグラウンドを知り、そういうキャラクターがいいのではないかと提案されました。ストーリーまで一緒に提案してくれるのが面白かったです。
また、Slackを活用して研修課題の内容を受講者みなさんと共有できたのも良かったです。他の人のプロンプトの使い方やアウトプットを見られることで参考になりました。一方的な学びではなく、横のつながりがあるのがAI活用アカデミアの良さですね。

ーー木下さんにもお伺いしたいのですが、これまでのお二人の話を聞いて、受講前の期待値と比較してみていかがですか。

グループワーク中に各チームのブレイクアウトルームに私も入らせてもらったのですが、会社を跨いで皆さんが活発に議論されている様子が印象的でした。
実際に課題に取り組み、手を動かしながら考える部分を前向きに捉えていた点はとても良かった一方で、私は最初の講義の部分も非常に重要だとも感じました。
前半のセッションの講義パートの中で、今後必要となる人材としては、データやAIを作成するデータサイエンティスト、そのAIを使ったり広めたりする人があるという説明がありました。
東急不動産ホールディングス全体として、データサイエンティストやエンジニアを育成するというよりは、AIなどの技術が盛り上がっている中で、その技術をいかに自分の業務や事業に落とし込み、顧客体験価値を上げたり業務効率化を実現するかという視点を学んでもらいたいという意図があったので、その後者の視点を持つ人材を増やしたいと思っています。

業務などでの具体的な活用のイメージを持ってから、「そういうことが確かに重要だ」となるのと、座学で基礎や概念を理解してから具体的な使い方を学ぶという2つのパターンがあると思うのですが、どちらにしても概念の部分は重要ですよね。

拡張型と人間代行型の講義が非常にわかりやすかったですね。AIは魔法のように何でもできるものではなく、今の業務の特定の部分をやってもらうために、このAIの機能が適している、というのが明確にイメージできるようになるのが重要です。

LINEヤフーの中でも、セッション1、2での座学の話は他の社内セミナーでも取り上げています。全員がデータサイエンティストになる必要はなく、使えるようになることが目指されています。
ホームページを作るにしても、ソフトウェアを使える人がいれば、作れる人もいるという話と同じで、チームとしてやっていければいいという考え方です。

ーー全員がAIを作れる人にならなくても、概念を理解した上で、それぞれが得意な領域とAIを組み合わせていくことで良くなるということですね。受講者の方々はAIについてしっかりと理解を深めたと思いますか?

はい、思います。最後のアンケートを見ると、セッション4のChatGPTに関する講義が非常に評価が高かったですね。アイデア出しや叩き台の作成、壁打ち相手としてChatGPTを存分に活用したという意見が多かったです。

AI活用アカデミアを受講して、その先に目指すところとは

ーー講座終了後、実際に仕事の現場でAIを使い始めた具体的なシーンはありますか?

社内報を作成しました。叩きを書いてもらい、それを基に内容を整えました。社長の従業員向けの新年の挨拶文の下書きもAIで作成し、その後内容を整えていきました。

イベント関連の文章を作成する際に生成AIを使うことが多いです。過去に投稿した文章との差分を生成AIに理解させ、新たに文章を生成するイメージです。
また、会議の議事録の要約もzoomの文字起こし機能を使い、ChatGPTに投げて作成しています。

私は何かを企画したり、人材を育成したりする立場なので、ChatGPTはアイデアを出すための叩き台の相手として活用しています。また、メール文章やブログのネタ出しなど、社内への啓蒙活動にも役立っています。

ーー今後身につけたいAI関連のスキルは何かありますか?

私はもともとG検定という機械学習の資格を持っていますが、より専門的な知識を身につけるための学習を計画しています。

個人の課題というよりは会社の課題として、業務効率化にどうAIを使うかが中心となっていますが、ビジネスにどう使うかという視点がこれからの課題です。業務効率化とビジネスサイドの両方を明確化して進めていきたいと思います。

ーー業務効率化とビジネスの利益を増やすためにAIを活用するというバランスをどう取るかということですね。本日はありがとうございました。