グループ横断でのAI活用を後押しした「AI活用アカデミア」

1分でわかる記事要約
LINEヤフーでは、日本のIT人材不足という社会課題を解決するため、受講実績3万人を超えるオンラインプログラミングスクール「テックアカデミー」を運営するキラメックスと協業し、オンラインスクール「AI活用アカデミア」を提供しています。
このサービスはおもにエンジニア以外の職種の方を対象として、AIの基礎を理解した上で、生成AIのノウハウを学び、業務に活用するスキルを習得するAI人材育成コースです。
今回は、本講座をご受講いただいたユナイテッドグループの受講者お二人に、お申込みいただいた背景や得た学びについてお話を伺いました。

村上 俊平 ユナイテッド㈱ 人事部 採用育成チーム

2019年新卒入社後、アドテクノロジー事業部で広告代理店向けの営業を経験。その後、DXコンサルタント、社長室にて企業文化の浸透やIR業務などのプロジェクトに従事した後、現在は人事部で、新卒・中途採用、育成、組織開発に取り組む。

関 彩 カソーク株式会社 代表取締役

コンサルティングファーム、消費財メーカーで経営企画部長として従事したのち、2020年よりユナイテッド入社。同社の事業戦略・人材開発部部長などを経て、カソーク株式会社の取締役に就任。

ーーーそれではまず、お二人の自己紹介をお願いします。

ユナイテッドの経営管理本部人事部採用育成チームに所属している村上俊平と申します。
現在の業務内容は主に新卒採用、中途採用および育成です。また、当社の単体に所属する若手社員を対象とした育成を中心に取り組んでおり、所属事業本部の課題に基づいて、研修や施策の検討・運営を行っています。

ユナイテッドグループの100%子会社であるカソーク株式会社で取締役を務めている関 彩と申します。当社が提供する副業/転職人材のマッチングプラットフォーム「Kasooku」を通じて、業務委託として成長企業で働きたいという方と企業とのマッチングビジネスを行っています。
実際の業務では、サービスのユーザーや企業双方とのコミュニケーションを行っています。

ーーご受講いただいた理由について伺いたいのですが、会社としてAI活用に関して感じられていた課題や、当時の受講の目的などがあれば教えてください。

まず、ユナイテッドグループとして生成AIへの対応を強化していく方針の中で、社員の生成AIに関するスキル習得の面で課題がありました。
グループ内には非エンジニア職も多く在籍しており、どのように生成AIへの対応を強化していくか、実際のビジネスでどのように活用していくかというイメージを十分に持ってもらいたいと思った時に、AI活用アカデミアがマッチし、導入することになりました。

ーーそれでは、お二人ご自身がAI活用アカデミアを受講しようと思った理由や、受講前のAI活用アカデミアの内容に対するイメージについて教えてください。

私が所属している人事部において、AIを活用し、オペレーションなどの業務改善の余地があると考えていました。しかし、「何かができそう」というイメージはあったものの、そもそも前提となるAIに関する知識や、AIで何ができて何ができないのか、という理解が十分でいない状態でした。
そこでちょうどAI活用アカデミアを知り、AIとどう向き合い、どう活用するのか、また生成AIだけでなくAI全体についても学べるのではないかという期待から受講しました。

私は以前から人材マッチング業界自体が、人が介入しないとなかなかマッチングができない、人材労働集約的になっていることを取締役として課題だと感じていました。これはどの企業においても同様で、逆にいうとチャンスでもあると考えています。
どんどん進化している生成AIの機能を活用することで本当に良いマッチングが生まれるのではないかと思っていたのと、併せて、事業としてもちょうど人的リソースをかけるべき業務をしっかりと精査するタイミングだと思い受講を決めました。

内定者、新入社員、人事、経営者という多様なメンバー構成が生んだ新しい発想

ーーAI活用アカデミア受講した率直なご感想を教えてください。

全7回の講座では、毎回、講師の方に直接質問ができる時間が設けられており、「こういう時はどうすれば良いか」「どの生成AIを使うのが良いのか」といった些細な質問もしやすく、翌日からの業務に役立つ知識が得られました。
人事部としても、AIでできることとできないことの判断が受講前よりも明確になり、今後のAI活用の可能性を確信することができました。

AIに関する基本的な概念や仕組みについて理解を深める部分と、具体的な活用方法の事例をセットで講師の方がお話しくださったのが良かったです。毎回、講義の後にグループワークだけでなく個人ワークもあり、自分事化しやすく学びがありました。

AI活用アカデミアの後半からは、自身の業務への具体的なAIの組み込み方について考える機会が多く、どういうデータが必要なのか? どこからそのデータを入手するのか? などをそれぞれが考え、グループメンバー同士でアイデアを出し合ったり、自分では気づけなかった視点から良いアイデアを提案してもらえたりしました。

AI活用アカデミア 講座構成
セッション1 オリエンテーション・AIが今直面する課題感
セッション2 AI最新技術紹介・タイプ理解
セッション3 生成AIのビジネス活用・事例
セッション4 生成AI活用方法・理解
セッション5 生成AI活用・AIプロジェクト推進
セッション6 AI企画立案・発表準備
セッション7 AI企画発表

※2024年7月時点

ーー講師の方はエンジニアでしたが、説明のわかりやすさはいかがでしたか?

エンジニア経験が全くないビジネス職の私でも、とてもわかりやすかったです。私たちの目線に合わせて教えてくださったと感じました。
また、講義の最後に出される課題に対して、次のセッションで必ず、参加者がどのような回答をしていたかを、講師の方が参加者全員に共有してくださった点も良かったです。他の参加者の考えやアイデアを理解することができましたし、講師の方がそれぞれの回答の良い点などを褒めてくださいました。褒められると安心できるというか、自信にもつながりますよね。

ーーお二人は同じグループのメンバーでしたが、グループワークはいかがでしたか?

私たちのグループには、私達2人の他に当時24年度新卒の内定者が2名と、入社1年目の若手社員の方がいました。堅苦しすぎず和気あいあいとした雰囲気でグループワークを行うことができました。
私が人事として新卒採用に関わっていたことや同グループ内に就活を終えたばかりの内定者や若手社員がいたこともあり、AI活用アカデミアの最終課題では就職活動中の学生に対して、新卒採用においてAIを使ってどのようなことができるかを話し合いました。

新入社員の「聞きづらい質問」を解決するAIチャットツールを提案

ーー最終課題の発表では、「学生のお悩み解決、FAQツール」というサービスを提案されていましたが、どのようなものか簡単に教えていただけますか。

就活中の学生の悩みを解決できるFAQのチャットボットです。
具体的には、学生側が企業に聞きづらい些細な質問や、採用サイトなどの企業ページに書かれている内容でわかりづらいことなどの悩みをチャットに送ると、AIが自動で回答してくれるというものです。
学生はこのFAQツールを使うことで、企業に対する疑問点を解消することができ、一方で企業側は非属人的に質疑対応をすることで生産性向上につなげることができます。就活生、企業双方とって便利なツールになると考えました。

ーーグループ内で、どのようなやり取りがあってこのツールにたどり着いたのですか?

内定者や新入社員のグループメンバーに、就活中の企業に対する疑問について話を聞いたところ、「学生側も選考を受ける上で企業に対して何かしら懸念や疑問を持っているものの、直接質問したら失礼に当たるのではないかと思い、踏み込んだ質問がしづらかった」という話がありました。そこで、学生の悩みを解決し、企業への理解を促進できるAIチャットツールの案をまとめることになりました。

ーー最終発表のアウトプットを出すまでに大変だったことを教えてください。

企画の内容自体はほとんど固まっていたので、資料作成はスムーズにできたのですが、どのようにデータを収集するのか、運用時に間違った情報をAIが伝えてしまうリスクをどのように制御するべきかなど、実際の運用に向けたアイデアを考えることに苦戦しました。
AIを使った仮想のアイデアで終わらせるのではなく、運用を見据えてAIを活かした設計まで落とし込むことの難しさを感じました。

そうですね。実際にデータセットを作ってチャットに質問を投げかけてみたところ、思ったような回答が出てこないケースもありましたね。

ユナイテッドグループの次なるAI活用に向けて

ーー受講を終えた現在、改めてAI活用アカデミアを会社として受講したメリットや、感じた良さはありましたか?

参加したメンバーの間でAIという共通言語ができたという点は大きなメリットになったと思います。また、内定者には当社の研修の一環としてAI活用アカデミアを受講してもらっていたので、入社後すぐに生成AIを業務で使っている姿が見られた時は、実施した意義を感じました。

ーーAI活用アカデミアを通じて、ユナイテッドグループの社員がAIに対する理解を深めることができたと感じますか?

はい。受講者を対象にしたアンケートの、「講義内容はあなた自身の成長につながると思いますか?」という項目では、10段階中、平均8.8ポイントと高評価でした。
事業部門でAIの活用に触れたり、前進するための1つの要素になったと思います。
実際に私が所属する採用育成チームも全員がAI活用アカデミアを受講していたため、チーム内でAIを活用する方法について、具体的な話し合いが始まっています。実際に、最終課題で企画した学生向けのFAQツールは、実用化に向けて準備を進めています。

元々ユナイテッドグループではAIに対する取り組みがありましたが、AI活用アカデミアを通じてできたグループ間横断の繋がりから、社員同士で気軽に相談ができるようになりました。当社サービスの「Kasooku」においても、手探りの状態から具体的なアイデアや企画を考えられる状態になったと感じています。受講を通じて、グループ全体として強力な武器を手に入れたイメージですね。

ーーお二人ご自身は受講後にAIの活用頻度や、AIに対する意識や理解度は変化しましたか?

変化しました。受講前から生成AIを活用してはいましたが、質が上がったと思います。プロンプトを一つ書くにしても、効果的に使うための発想ができるようになったのは大きな変化です。AIそのものに対するハードルが下がって、最初の一歩を踏み出しやすくなりましたね。

私も仕事で何かを考える時は、まずChatGPTに聞いてみよう、アイデアを出すために相談してみようという意識を持つようになりました。実際に、マッチングサービスの競合調査をする際、カオスマップをダウンロードしたり、各社のサービスを調べたりするなどの作業や、リスト化する作業は生成AIが得意だったりするので、これまで工数がかかっていた部分はできるだけ任せるようにしています。
また社内でも、Slackと生成AIを連携させて面接の要約を自動で行うなど、業務のあらゆるシーンでAIを使い始めています。

ーーAIの活用に関連してスキルがまだ十分に足りていない部分や、今後意識して身につけていきたいことはありますか?

アイデアを出すところで終わらせず、業務の非効率な部分をAIで改善する、実装するというところまで取り組む力を身につけたいですね。もう少し知識や企画力を身につけた上で、トライアンドエラーを繰り返していければと思います。

私は業務効率化という裏側の部分よりも、マッチング事業という表側の部分でAIをもっと活用できるスキルを身につけたいと考えています。マッチングや面接にAIが介入した際に、話しやすくなったり、適切なアドバイスや対話ができるようにするなど、AIが人間以上の価値を出せることが理想です。
機械学習は数多く経験することで精度が上がりやすくなることから、人よりも早く面談のスキルが上がっていくのではないかと思います。

ーーいろいろお話を聞かせていただきありがとうございました!